小さな会社には、たいてい何もかも知っている人が一人います。どの客と何を話したか、システムの合言葉、仕入先の誰に電話するのか、値段がどう決まるのか。その人はふつう経営者本人です。

この形は、誰かが体調を崩す日まではもちます。あるいは一週間休みを取るまで。あるいは仕事の途中で別の仕事に引っ張られるまで。その日、仕事は遅くなるのではなく止まります。この記事は、止めないための最小限の記録についてです。

まず切り分けます。知識はどこにあるのか

状況は二つあり、手当ての仕方も違います。

知識が一人の頭の中にある場合、その人が不在のあいだ誰も手が届きません。電話がつながっていても、そのたびに本人に聞くことになります。休暇でも入院でも結果は同じです。

書いてあるが散らばっている場合、状況はましですが解決ではありません。合言葉が一か所、仕入先の一覧が別の場所、値決めの考え方が三か所目にあります。探すのは、聞くのよりわずかに速いだけです。

目的は両方を直すことではありません。一週間仕事を回すのに要る最小限を、一か所にまとめることです。

あなたがいないと失われる五つのこと

1. 客と何を話したか

客から電話が入り、先月話した値段を尋ねられます。そのやり取りの記録がなければ答えられません。代わりに出た人はなおさらです。

これは客を失うもっとも静かなやり方です。相手は文句を言わず、ただ二度と連絡してきません。

2. 合言葉と設定

サイトの管理画面、メールの口座、会計のソフト、各種の投稿先。入り口が一人に集まっていると、その人なしでは何も開きません。復旧の手だても、たいてい同じ電話を通ります。

小さな会社がもっとも飛ばしやすい項目であり、これ一つでいちばん多くの仕事が止まります。

3. 誰に電話するのか

仕入先、税理士、修理の担当、運送。番号は電話の中にありますが、誰が何を受け持つのかは経営者の頭の中だけにあります。代わりに入った人は一覧を見ても、どの名前がどの困りごとに対応するのか分かりません。

4. 値段の決め方

見積もりには原価、日数、詰められる幅が入ります。その考え方が書かれていなければ、代わりの人は安すぎる数字か高すぎる数字を出します。どちらも損になります。

価格表だけでは足りません。書き残すべきは表ではなく、どういう場面でどうするかです。

5. 繰り返す仕事の順番

月初めに決まって行うことがあります。請求書を出す、入金を追う、在庫を数える、報告を送る。これが一人の習慣になっていると、その人がいないあいだは行われず、抜けたことに誰も気づきません。

同じ問題の自動化の面についてはコードを書かない自動化をご覧ください。

あなたのいない一週間はこう進みます

一つの出来事で止まるのではなく、小さなことが積み重なります。よくある一週間はこうです。

月曜。客から先月の値段について電話が入ります。出た人は見る場所がなく、戻り次第こちらから連絡すると答えます。客は待ちます。

火曜。仕入先が支払日を尋ねてきます。何を取り決めたのか誰も知りません。請求書はどこかにありますが、どの期日を話したのかは誰にも言えません。

水曜。会計のソフトに入る必要が出ます。合言葉はあなたの手元にあり、復旧の番号もあなたの電話に届きます。その日は開きません。

木曜。新しい客が値段を尋ねます。代わりの人は数字を出せません。計算の仕方を知らないからです。客は別のところに尋ねます。

金曜。月末の仕事が手つかずです。請求書は出ておらず、入金も追われず、報告も送られていません。抜けに誰も気づきませんでした。それらが一覧ではなく、あなたの習慣の中にあったからです。

この一週間、誰も間違いを犯していませんし、機械の不具合もありません。知識が一か所、あなたのところにあっただけです。

三分でできる自己点検

三つのどれかに答えづらいなら、次の最小限の記録がその穴を埋めます。

何を書けば足りるか

手引きを作る話ではありません。一週間もたせるのに要るものは短いです。

どう書くか

短く書きます。項目ごとに数行で足り、網羅より読めることが大切です。四十ページの文書は開かれません。

一つのファイルにまとめます。五か所に分かれた情報は、書いていないのと同じ結果になります。急いでいるときにどれも見つからないからです。電話で開けるようにしておきます。必要になる場面で、事務所にいるとはかぎりません。

いつ書くか

今日です。これにちょうどよい時期はありません。必要になる瞬間は、知らせもなくやって来るからです。

一度に終えようとしないでください。初日は入り口の一覧だけを書きます。それだけでいちばん大きな差が出ます。残りの項目は次の日から足していきます。

書いたあとは月に一度目を通します。変わったところは直します。手入れされない記録は半年で誤った情報の出どころになり、誤った情報は情報がないことより悪い結果になります。

避けたほうがよいこと

よくある質問

一人で働いています。誰に引き継ぐのですか

引き継ぎに二人目は要りません。この記録はご自身にも役立ちます。二週間後、自分の書いた覚え書きが思い出させてくれます。急ぎの場面ではご家族や税理士が開くこともできます。

書くのにどれくらいかかりますか

入り口の一覧は三十分ほどで、もっとも役に立つ部分です。残りの項目は数日に分けられます。一度に終えようとすると、たいてい途中で止まります。

合言葉を書き残すのは危なくありませんか

紙に書くのは危険です。管理ソフトは暗号化して一つの親の合言葉の後ろに置きます。その親の合言葉は信頼できる方に預けるか、封をした封筒に入れておけます。

すべて頭に入っています。本当に必要ですか

頭に入っていること自体は問題ではありません。問題は、そこにしかないことです。一週間連絡がつかないときに仕事がどれだけ止まるかを見れば、答えはそこにあります。

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