収支の記録に帳簿、エクセル、管理画面のどれを使うかという選択は、一番良い道具を探すことよりも、いまの事業の状態に合う道具を探すことです。一人が記録し、項目が少ない事業なら帳簿で足りることがあります。記録が複数の人、複数のレジ、複数の通貨に分かれてくると、エクセルで整理できます。「今月いくら稼いだか」という問いの答えを毎回手作業で組み立て直しているなら、管理画面を検討する価値があります。どれを選んでも、道具が役に立つのは記録が一か所にまとまっているときです。

この記事は、高圧変電所の運転業務に 11 年携わり、5 年前から企業向けのソフトウェアを開発している者の視点で書いています。手書きの記録を月末のエクセル表にまとめる作業がどういうものかは手書きの記録から月次報告へで紹介しました。ここでは同じ問いをお金の記録に当てはめます。話をうかがった小さな事業者からよく聞く二つの言葉も、この記事の出発点です。「レジには一人しかいない」、そして「月末になっても、いくら稼いだのかわからない」。

月末に「いくら稼いだか」に答えが出ない理由

多くの小さな事業では、お金の記録が一か所にありません。売上はレジやカード端末の控えに、経費は請求書のファイルに、カード払いは銀行アプリに、現金で渡した前払いは紙切れに残っています。どの記録もその場所では正しいのですが、月末に誰かが並べてみない限り、合計は出てきません。

答えが遅れるよくある理由は三つあります。

この記事のテーマは利益の計算方法ではなく、その計算の土台になる記録をどこに置くかです。売上と利益の違いや仕事ごとの計算は本当にお金を生んでいる仕事はどれかで扱っています。一日の終わりのレジ締めで出る差額は別のテーマで、夜のレジ締めが合わないときは?で読むことができます。

帳簿:足りるのはいつか、どこで行き詰まるか

帳簿の一番の強みは、手の届くところにあることです。電気もインターネットもパスワードもいらず、レジの横に置いておけて、書くのに特別な技術も必要ありません。そのため多くの事業者が最初の記録を帳簿に付けており、それは間違った始め方ではありません。

帳簿で足りる場合

帳簿が行き詰まるところ

帳簿は書くのは簡単ですが、合計するのは簡単ではありません。月末にすべてのページを最初から足し、経費を分類し、先月と比べる作業は、毎回手作業になります。二人目も記録を付けるようになると、手書きの字、略語、「これは書いたかな」という不確かさが加わります。帳簿は一冊しかないので、なくしたり、濡らしたり、家に置き忘れたりすると、記録の一部も一緒に失われることがあります。

目安はこうです。月末の合計がいつも先送りになっている、あるいはそもそも出されていないなら、帳簿は記録を集め続けてはいても、もう問いには答えていません。

エクセル:何を解決できて、どこで負担になるか

エクセルは帳簿の「合計しにくい」という問題の解決策になりえます。収入と支出の行を一度正しい列に書いておけば、合計、分類ごとの内訳、月ごとの比較を数式で出せます。ファイルはコピーやバックアップができ、税理士とも共有できます。多くの事業者にとって、帳簿の次の自然な一歩がエクセルです。

エクセルがうまく働く形

エクセルが負担になり始めるところ

問題はたいていエクセルそのものではなく、その周りのやり方から生まれます。何人かが自分のパソコンでファイルを開いて更新すると、「どれが最新か」という問いが生まれます。数式を作った人が辞めたり、行がうっかり消されたりすると、合計がなぜ変わったのかがわかりにくくなります。レジ担当が携帯電話から記録できないため、一日の終わりに紙に書き、それを誰かが夜にエクセルへ移す、ということになると、帳簿が戻ってきたうえに転記の作業まで増えます。

顧客リストでエクセルがいつ限界になるかを説明したエクセルの顧客管理はいつ限界を迎えるかの兆候は、収支表にもおおむね当てはまります。複数の人、複数のコピー、そして毎月手作業で作り直す集計です。

管理画面:何が変わり、何が変わらないか

管理画面は、ブラウザや携帯電話から記録を入力し、集計がひとりでに計算される仕組みです。違いを生むのは画面の見た目ではなく、記録が一か所にあり、開くたびに合計が最新になっていることです。

管理画面で変わること

管理画面でも変わらないこと

この種の管理画面の構成は、KILMAN のビジネス管理システムのページで説明しています。収入、支出、顧客、製品の記録を一つの仕組みにまとめ、最初の画面に今月の収入、支出、純利益を表示し、一回きりの収入を定期的な収入と分けて扱い、外貨建ての経費はその通貨のまま入力します。

切り替えで一番多い失敗:同じ記録を二か所で付けること

帳簿からエクセルへ、あるいはエクセルから管理画面へ移るとき、一番よくある選択は「しばらく両方付けておこう」です。その気持ちはわかります。新しい道具を信頼できるまでは、古い道具を手放したくないものです。けれども二つの記録を並行して付けると、どの項目も二回書くことになり、二つの合計が合わないときには、どちらが正しいかを調べることが別の仕事になります。

より簡単なのは、切り替えに開始日を決めることです。

同じ情報を二つのプログラムに、あるいはプログラムと帳簿に並べて入力することがなぜこれほど多いのか、そしてどう簡単にできるかは、同じことを二度入力していませんかで詳しく説明しています。

どれが合っているか:判断表

下の表は、事業のいまの状況を一つの提案に結びつけます。当てはまる行が複数ある場合は、表の下のほうにある行がたいていより広い必要に対応しています。

状況提案理由
一人が記録し、レジは一つで、月末の合計も楽に出る帳簿で足りる解決すべき問題がないときは、新しい道具は仕事を増やすだけ
帳簿を付けているが、月末の合計がいつも先送りになるエクセルに移る合計と分類の作業を数式に任せられる
経費を分類別に見たい、月ごとに比べたいエクセルに移る決まった列とプルダウンでこの必要を満たせる
二人以上が記録している、またはレジが複数ある管理画面を検討記録する場所が一つなら、誰が何を書いたかが見えるようになりうる
エクセルファイルのコピーがいくつも出回り、最新がはっきりしない管理画面を検討コピーが一つなら、コピー同士を突き合わせる作業が生まれない
外貨建ての経費や毎月繰り返す収入があり、手作業での管理が難しくなっている管理画面を検討繰り返す項目は一度設定でき、為替換算を手で更新しなくてよい
月末を待たずに今月の状況を見たい管理画面を検討開くたびに、その日までの記録から集計を計算する
分類が入り乱れ、家計と事業の支出が同じところにあるまず分けてから選ぶどの道具を選んでも、混ざった記録からは混ざった報告が出る

この表は境目を示しません。何人から、何項目から管理画面が必要になるという決まった数字はありません。目安は、記録があなたの問いに間に合うように答えているかどうかです。

切り替える前に準備すること:チェックリスト

どの道具に移る場合でも、切り替えの前に次の問いに答えておくと、作業が楽になることがあります。リストの大半にソフトウェアは要りません。紙一枚と、事業をわかっている人と一緒に座るだけで足りることもあります。

このリストが埋まると、選択はひとりでにはっきりすることが多いものです。リストが短く一人で記録しているなら帳簿、分類と比較が大事ならエクセル、人やレジが複数あるなら管理画面です。

よくある質問

収支の記録は帳簿で足りるか

一人が記録し、項目が少なく繰り返しが多く、月末の合計が出せるなら、帳簿で足りることがあります。合計がいつも先送りになる、または二人以上が記録を付け始めたなら、エクセルや管理画面を検討できます。

エクセルの収支表を整った状態に保つには

日付、内容、分類、金額、支払方法の決まった列を作り、分類はプルダウンから選びます。ファイルには正本が一つあり、それを更新する決まった担当者がいます。

管理画面は会計ソフトの代わりになるか

なりません。管理画面は事業者が自分の収支を見るための画面です。正式な記録、書類の保存、申告に関わる事項については、担当の税理士にご相談ください。

しばらく帳簿と管理画面の両方に書いてもよいか

並行して記録すると、どの項目も二回書き、二つの合計を別に突き合わせることになります。開始日を決めてその日からは新しい道具にだけ書き、古い記録はその日までの合計で締めるほうが簡単です。

管理画面に移る前に何を準備するか

収入の項目、短い支出分類の一覧、お金の出入り口、記録を入力する人、そして開始日です。家計と事業の支出を分けることも、切り替えの前にはっきりさせておくのがよいでしょう。

月末にいくら稼いだかを見たいとき

収入と支出がばらばらの場所にあり、月末の合計を毎回手作業で組み立てているなら、記録をどこにどう置くかを一緒に考えることができます。既製の管理画面が仕事に合わない場合や、いま使っているプログラムが仕事の半分しか担わず残りをエクセルで回している場合は、カスタムソフトウェア開発のページで紹介している方法を検討できます。

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